こうして、午前5時頃、3人はようやく下山道へ入る。山頂から5合目まで一気に約4時間をかけて下る。
最悪なことに、下山中の天気は霧から雨に変わっていた。7合目を過ぎる辺りまで、ずっと雨。 すでに述べたが、100均カッパの下は全滅、上は瀕死の状態である。ジーパンは完全にビチョビチョで太ももに、ひざ裏に、すねにピッタリくっつき、歩きにくい。ツアーのHPにジーパンやチノパンでの参加は控えるように書いてあった意味が、本気でわかる。 山は登りより下りの方がつらいとか、よく言われる。目標もないし、疲れも出てくるし、とかで。実際、サクさんや、ここへきてツヨシも若干しんどがってる。オレも実はきつかったが、一応「オレは平気」と言っておいた。早く下りたかったのだ。 休憩とかしてたら、寒くて耐えられへんし。寒いのも、頭痛いのも下に行かな治らへんし。もはや、アクビや頭痛も高山病か単なる寝不足かの区別もつかん状態ではあったが。 7合目くらいで雨が上がり、景色がよく見えるようになるとだいぶ気持ちよくなる。やっぱすげー天気に左右される。 6合目辺りになるとすっかり暑くなり、Tシャツに着替える。ジーパンもだいぶ乾く。日差しが強いねんね。 そして、馬が目に入るといよいよファイナルカウントダウンだ。 その時、突然2人が叫ぶ 「はい、うんこ踏んだー!!」 そう、踏んでた。しかも2人はオレが踏みそうなんをわかって黙っていた。 オレは持ってた金剛杖でサクさんの方にうんこを飛ばす。すると、すごい目でにらみつけてきた。彼の目の奥に「もうあんまり派手に動いて避ける体力は残ってないから、本当にやめろ」といった高圧的なものを感じ、オレのこの利き腕で彼の肩を思いっきり押すことを決意した。決まり手は送り出しだ。やってやる。 先頭を歩くオレ。前方に馬糞を確認する。 あえてスルー。いきなりはまずい、まずは油断させる。できるだけホカホカのがいい。 そしてしばし歩く。また前方に馬糞。なかなかの上物。距離にして10メートル程か、7メートル、5メートル、だんだんサクさんに近づく。自然に、そう自然に。景色見たりしながら。心の中で「きれいやなぁー」ってゆってみよう。よし、いいぞ。 4メートル、3メートル、2メートル、いよいよ 「こっち来んじゃねーよ。」 やっぱばれてた。 サク「バレバレなんだよ。」 オレ「だってサクさんだけうんこ踏んでないのずるい!!」 サク「そういう問題じゃねーよ。」 その時、ツヨシが言った。 「いつまでそんな小学生みたいなこと言ってんすか。」 気付かなかった。 約24時間に渡り、ほぼ半径3メートル以内にいたオレでさえ気付かなかった。 ツヨシが、あのツヨシが。出発したての時は馬糞を見て、「バフーン」とガチョーンのイントネーションではしゃいでいた、あのツヨシがである。 山は、富士はツヨシを少年から大人の男に変えていた。 そして、午前9時前だろうか、ようやく3人は5合目に帰還した。晴れやかな、とても晴れやかな気分だった。 オレはキッズとして、 ツヨシは大人の男として、 そしてサクさんは唯一うんこを踏まなかった勝者として。 次回、最終回・総括
by sonetaku
| 2007-08-15 02:07
| 富士登山記
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